羊の夢

この台本の著作権は、作者『はやまおう。』にあります。
こえ部Liveでの声劇、skype劇以外のご利用の場合は
事後報告でもいいので、BBSにご一報ください。
※あえて細かい設定は書きません。
自分が感じる世界、感情で演じてみてください。

                   役表

羊の夢
ヨウコ♀:     
アキラ♂: 

http://j.mp/1gOwAzl 

 

ヨウコM:灰色の世界
    私は足もつかない水の中から空を見る。
    真っ黒… 陽の光なんて、此処には届かない。
    いや…最初から太陽なんてないのかも。
    産み出す事は容易だけど、何より、私は望まなかった。
 
    太陽は嫌い。
    図々しすぎるほど、眩くて。
    誰にも、入って来られたくない私だけの世界に、
    土足でズカズカ踏み込んでくる。
 
 
ヨウコ「嫌い。」
 
アキラ「僕の事?」
 
ヨウコ「そう」
 
アキラ「嘘」
 
 
ヨウコM:真っ白な海底に、そいつはいた。
 
 
ヨウコ「なんで貴方がここにいるの?」
 
アキラ「僕はどこにだっているさ。
    君が僕を嫌いでも。
    僕はいつだって君の傍にいる。」
 
ヨウコ「私の気持ちは?」

アキラ「関係ない」
 
ヨウコ「横暴ね」
 
アキラ「知ってるだろ?」

ヨウコ「…だから、嫌い」
 
【ヨウコが落ちてきた上を見上げるアキラ】
 
 
アキラ「真っ暗だね」
 
ヨウコ「貴方のせいよ?」
 
アキラ「ここは真っ白」
 
ヨウコ「それも貴方のせい」
 
アキラ「ここが真っ暗なら、君は歩けやしない。」
 
ヨウコ「歩けなくて結構よ。」
 
アキラ「どうして?」
 
ヨウコ「歩きたくないもの」
 
アキラ「ここが真っ暗なら、君は何も見れやしない」
 
ヨウコ「見えなくていいの」
 
アキラ「なんで?」
 
ヨウコ「見たくないから」
 
ヨウコM:こいつとはいつも押し問答。  
     消えて欲しくても、消えてくれない。
 
 
ヨウコ「お節介」
 
アキラ「うん」
 
ヨウコ「偽善者」
 
アキラ「そうかもね」
 
ヨウコ「自信過剰」
 
アキラ「知ってるよ」
 
ヨウコ「なんでいつも笑ってるの?目障り。」
 
アキラ「じゃあ、なんでいつも僕を睨み付けるの?」
 
ヨウコ「眩しいからよ」
 
 
【間】
 
 
アキラ「僕が嫌い?」
 
ヨウコ「大嫌い」
 
アキラ「どこが嫌い?」
 
ヨウコ「何もかもよ。
    いつもニコニコして 私を見つめる瞳も。
    図々しく、踏み込んでくる所も。」
 
アキラ「だけど、君は僕を求めてる。」
 
ヨウコ「そんなわけない。
    今すぐ消えて欲しいって、
    何度言っても消えてくれないのは貴方じゃない。」
 
アキラ「消える事は出来ないよ。君がいるもの。」
 
ヨウコ「構わないで」
 
アキラ「無理だ」
 
ヨウコ「どうして?
    貴方は その眩しい光で、別な誰かを照らせばいい。」
 
アキラ「その為には、君が必要なんだよ。」
 
ヨウコ「え?」
 
アキラ「君が居ないと、輝けない。
    誰も照らせない。
    君は必要とされている。」
 
ヨウコ「綺麗事」
 
アキラ「君も…僕が居るから、此処に居られる。
    真っ暗な闇の世界には、君は存在しないのさ。」
 
ヨウコ「貴方なんかいかなくても 生きていける。」
 
アキラ「僕は、君が居ないと意味がない。」
 
ヨウコ「めんどくさい…」
 
【手を差し出すヨウコ】
【その手をとるアキラ】
 
アキラ「お手を拝借」
 
ヨウコ「離れたい」
 
アキラ「それは無理」
 
 
【ヨウコの手をつかんで、上に向かい泳ぐ。】
 
【二人が水面に近づくにつれ、空が白に染まり、光輝いていく】
 
アキラ「ほら、もうすぐだ。
    海底に沈むは、君の残像。」
 
ヨウコ「私の居場所は…」

アキラ「僕の中。」
 
 
【世界が真っ白に光る】
 
 
ヨウコ「貴方がいるから、私は私を感じられる。」
 
アキラ「嬉しい?」
 
ヨウコ「…孤独よ。
    一人でいるより、ずっとね。」
 
アキラ「君がいるから、僕は満たされる。」
 
ヨウコ「傲慢ね」
 
アキラ「知ってるよ
    君がいる限り、僕は君を逃がさないし
    僕がいる限り、君は消えない。
    何度だって迎えにいく。」
 
ヨウコ「そうね…どこにいても、見つかるし。」
 
アキラ「許してよ」
 
ヨウコ「許せない」
 
アキラ「傍にいたいんだ」

ヨウコ「…何を言っても無駄よね。私には貴方が必要 貴方には私が必要」
 
アキラ「ようやく気づいた?」
 
ヨウコ「はじめから知ってた」
 
アキラ「…ほら、目が覚めるよ」
 
 
アキラM:世界は今日も光に映し出され、陰影によって浮き彫りになる。
     これは羊が見た夢。 光と影のお話。
    羊とは何か?…君の中にもいるはずだ。
    空想と現実を共有する、大きな羊が。


【おしまい】